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ニック(4)最終章

「ん?なんか音がしたね?」

また、音がしましたがノックではないのです。
当時、僕の街では夜寝る直前まで鍵はかけませんでしたので、
もしご近所さんなら「こんばんはぁ」など、玄関の開きドアを開けて声をかけるはずなのですが、
ただ、物音なんです。

玄関に行きました。

誰もいない・・・。

その時に、また「ガシガシ」と玄関を叩く音がしました。
玄関を開けるとニックがいたんですね。

「ニック!!」

ニックは、僕に身体をすり寄せ、僕が屈むと顔を舐めてきました。

思い出したのです。

4ヶ月間経って、
僕ら家族が、自分を残していなくなった家族だということを思い出したのです。

そうでした。
昔から何か要求があると、ニックは前足で玄関のドア(ガラスの部分)を押すように、叩いていました。

家族4人がニックを迎えると、見上げながら泣くような声で吠えました。
何度も何度も吠えました。
家族4人がニックを囲むと、その真ん中に腹ばいになり吠え続けました。
ニックが何を言おうとしてるのか感じることができました。

「会いたかった!会いたかった!どうしていなくなったのか!!」

そう言ってるようでした。
家族は、涙、涙でしたね。

ニックは、玄関で寝るのが好きだったんですね。
昔からそうでした。

家族の声を聞きながら玄関にいるのが好きでした。

父が、

「思い出したか!ニック!!」

父のことも大好きでしたからね。何度も何度も吠え続けました。
そうして、昔のように玄関で丸くなりましたので、あり合わせの晩御飯をあげました。

ニックは、友人の家から勝手に来たに違いありません。
友人家族はニックをとても可愛がってくれており、
戻って来たからといってニックを返してくれとは言えない状況でした。

とても複雑な関係でした。

友人の家まで、歩いて2分とはかかりません。
1時間ほどいたかな。

母が、今日はひとまず、友人の家に返そうということになり、
玄関のドアを開けたのですが、ニックは出て行こうとしません。

「ニック、もうお家はここじゃないとよ。今日は帰りなさいね」

そう言い聞かせると、ニックは今の家族のところへ帰って行きました。
そのようなことがあってから、約1〜2週間に1度、ウチを訪ねてくるようになりました。

ご近所さんから、聞いた話では、
僕らが北海道に行った後、毎日のように家の前にじっと座っていたということでした。

僕らは、住んでいた家を、4年間ある会社に社宅として貸したのです。

ニックにとっては、自分の家に知らない人が住んでると感じていたのでしょう。
そのうち、この家にくる回数も減り、いつしか家の前に座ることはなくなったという話を聞きました。

やはり、あの後、毎日この家に来てたんですね・・・。

いつの間にか、
ニックがウチに来る回数が減っていきました。

なぜなら老犬になっていってたからです。

その分、僕ら家族がニックの顔を見に行ってました。

老いていくのは早いものです。

「最近、あまりご飯を食べなくなってきた」

と、いう話も聞かされていました。
目もあまり見えてなかったようです。

そんなある日、ちょうどニックの話をしていた時でした。
久しぶりに玄関を叩く音がしたんですね。

「あっ!?ニックが来た!!お-!!ニック久ぶり!!わかった、わかった舐めるなよ!」

その日のニックは少し違っていました。
鎖をつけたまま家にやって来たのです。

長い鎖をジャラジャラと引っ張りなが来たのでしょう。
そして、やけに顔を舐めるのです。そして直ぐに座り込みました。

ご飯を与えても口にしません。
直ぐに、また身体を丸くして玄関で寝てしまいました。

老犬です。やっとここまで来たのでしょう。

寝ているようでしたので、僕らは居間に戻りました。
しかし、その後直ぐでしたね。15分も居なかったと思います。

玄関を叩く音がするのです。いつもは1時間ほど居るのですが、
その日は、直ぐに帰りたがりました。

玄関を開けると、ゆっくり出ていきました。
鎖をジャラジャラと引きずりながら・・・。

翌朝、友人から電話がありました。

ニックが死んだと・・・。

昨夜、
最後の挨拶に来たんですね。

最後の力を振り絞り、つないであった鎖の根っこの杭を引き抜き、
僕ら家族に会いに来たんですね。

思えば確かに変だったんです。
なんであの時、気づいてあげなかったのだろうと、
今でも、ニックのことを思い出すことは多いですね。

初めて僕のところに来た日。
集めていた大事な記念切手のストックブックを噛んでしまい、
激怒した僕の声に震えて犬小屋から出てこなかった日
買い物かごをくわえて歩いた日
近所の犬を噛み殺した日
4年ぶりの僕に吠えかかった日
家族を突然思い出した日
さよならを告げに来た日

僕が飼ってきた犬の中で、あれほど、寂しい思いをさせ、
また、あれほど気遣いをさせてしまった犬はありません。






ニック〜完


ASKA(2020/4/26 20:12)

COMMENT

ニック(4)最終章のコメント

  • ニックネーム:SKRA
    挨拶

    おはようございます

    おやすみなさい
  • ニックネーム:かりん
    寂しかったね。。だけど みんなに またあえてよかったね。
    お星様になったニックちゃん ASKAさん あ...重明ちゃんを守ってあげてね☆
    ..涙がとまりません
  • ニックネーム:りりー♪
    ニック可哀想すぎる( ; ; )
  • ASKAさーん(╹◡╹)♡

    ずっと聞きたかったそのお話し。
    動物に優しいASKAさん。
    以前の動物園のお話も全く同感でした。
    私動物の気持ちがわかるんですよ。笑われてしまうかもしれませんね。
    ありがとう。ASKAさん。
  • ニックネーム:横浜の弥生ちゃん
    泣いてしまいました。
    私もわんこを飼っているので、なんだか切なくて。。
    ニック、賢くて、幸せにしてくれるわんこだなぁ。。