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蘇州夜曲

ASKA ソロアルバム
1枚目で、

「蘇州夜曲」

を、カバーしました。

その「蘇州夜曲」をカバーするにあたり、大変な経緯があったことを以前語ったかと思っていましたが、
ブログ検索しても出てきませんでしたので、お話しますね。

ソロアルバムで、両親がよく鼻歌で歌ってた「蘇州夜曲」を選びました。
デビュー後、どのくらいだろ?
4〜5年目だったかな。

僕は「ソロアルバムを制作したい」と、当時のプロデューサーに申し出たのですが、
「まだ、早すぎる」とのことで、了解を得られませんでした。

しかし、元々ソロですからね。
「ソロアルバム」への想いは強かったのです。

「ボヘミアン」の作詞をした後、楽曲の依頼が増えたんですね。
そこで思いついたのが、

「提供曲を僕が歌うということで、ソロアルバムを作らせてもらえないだろうか?」

でした。

プロデューサーは、

「それなら企画アルバムとして大義名分になる。ちょうどソロシングルもリリースしたことだし、
それを含めて、今なら良いかもしれないな」

「MY MR.LONELY HEART」
「夢はるか」

の2曲が、ソロシングルで、残りの楽曲はカバーという形になりました。

他のシンガーに提供した楽曲は、僕が作っても、僕の曲ではありません。
ここは、権利なども絡んできますので、その説明は割愛させていただきますね。

つまり、自分の作った曲をカバーするという立ち位置でした。
その時思ったのです。

カバーなら、自分の楽曲以外でもいいじゃないかと。

あのアルバムは、静岡県の河口湖スタジオで、
レコーディングメンバーと合宿をして制作しました。

「蘇州夜曲」のアレンジャーは「瀬尾一三」さんでした。

で、10曲が完成し、歌詞カード(中ジャケ)のチェックをしている時に、
耳を疑うことを告げられたのです。

「『蘇州夜曲』はアルバムに入れられない」

と・・・。

今では、世の中に発表した楽曲は、著作者の権利を侵害しない限り、
誰でもカバーすることができますが、昭和20年代頃の楽曲の権利は、レコード会社にあり、
そこを越えても、著作者の承諾が必要だったのです。

「蘇州夜曲」は、

作詞:西條八十(やそ)
作曲:服部良一

さんです。

服部家からは承諾をいただきましたが、
作詞の(故)西條八十さんのご家族からは承諾していただけなかったのです。

何やら、僕の前に、あるお笑いタレントさんが、「蘇州夜曲」をお笑い調でカバーされたようで、

「『蘇州夜曲』のカバーは、もう認めません」

と。

そうですよね。
日本歌謡史に残る名曲ですからね。
ご家族が、そのような判断をされたことは理解できます。

もうMix Downも終わり、アナログマスタリングも終わっていました。
当時は、レコードですから、簡単に楽曲を外すということができないのです。

外すとなると、
もう一度、最初からアナログマスタリングをやり直さなくてはなりません。

当然、制作の遅れは、リリース日に関わってくる。

レコード会社の、僕の担当が交渉に行ってくれたのですが、
西條家の決心は固く、リリース前に途方に暮れてしまいました。

「僕の歌は、お笑いタレントさんの作品とは違う」

そうは思っても、思っているのは、こちら側だけですからね。
「お笑い」「シンガー」
そのような問題ではなく、

「カバーすることが認められない曲」

となっていたのでした。

結局、「蘇州夜曲」をお蔵入りさせて、
もう一度アナログマスタリングをやり直すことで、話が進んでいきましたが、どうしても諦められない。

あのアルバムには必要だと心底思っていたからでした。

マスタリングをやり直す前に、僕の所属していたレコード会社のスタッフに、

「直接、西條さんのご家族に会いに行ってくれないだろうか?
そして、レコーディングし終わっている『蘇州夜曲』を聴いていただいて、
それでダメなら諦めよう」

いま、皆さんのお手元にある

ASKAソロファーストアルバム

「SCENE」

の2曲目に収められています

「蘇州夜曲」

は、そのような経緯があって、作品となったものです。

服部克久さんがお亡くなりなられたことから、
そんなことを思い出しました。


ASKA(2020/6/12 21:45)


P.S.

このブログでは、もう何度も出てくる言葉です。

「人の縁とは不思議なものだ」

その後、90年代終わり、
是永の紹介で、12弦のギターを特注で作りました。

そう、あのホワイトの12弦ギターです。

そのギターを作ってくれました方が、「西条さん」という名の方でした。

もう、お分かりですよね。

「人の縁とは不思議なもの」

西条さんに「SCENE」の時の「蘇州夜曲」の話をしました。
今、僕の元には、

「西條八十集」

の、第1版があります。

貴重なものを譲っていただきました。

生涯、大切な本です。

COMMENT

蘇州夜曲のコメント

  • ニックネーム:SKRA
    常々なぜSCENEというアルバム名にしたのか不思議でした(⁠◕⁠ᴗ⁠◕⁠✿⁠)
  • ニックネーム:MINEYO
    ん〜郵便局かネット検索か
  • ニックネーム:Marronglace
    当時、上京してコンサートに行くことを大反対していた祖父。
    たまたま蘇州夜曲を聴いてところに祖父が来て、なんでこんなじいちゃんが若い頃の曲を聴いているんだ!と言われたことを思い出しました。当時、私はそんなに古い楽曲だとは知りませんでした。
    歌っている人は歌が上手だなとも言ってました。
    それ以来祖父は、私がコンサートに行っても何も言いませんでした。
    そんな祖父も亡くなって10年以上経ちましたが、自分の中での一番の祖父との思い出です。
  • ニックネーム:emican
    sceneはサンフランシスコの日本食店で当時買いました。アメリカの田舎に住んでいたので、大都市に旅行に行くと必ず日本食店へ行き、チャゲアスやASKAさんのCDを買うというのが私のミッションでした(*^^*)
  • ニックネーム:のりべ^^
    私の50年来のペンパルは 宮崎さん です^^ 家の目の前にある 航空自衛隊からアスカとゆう飛行機が飛んでました ハッとする 事よくあります