90年代メロディ【追記】

2025.10.29

日常

今年、春頃、いや、久しぶりに「蚊」に刺された時だから夏だ。
そう、夏頃、別プロジェクトでスタジオを借りたことがあった。
個人スタジオ、プライベートスタジオだね。

1987年。
あの頃、ミュージシャンはマンションを借りるのが大変だった。
音を出すからさ。

そんな時、僕は外国人が持っていたマンションに出会った。
あれだよ、「PRIDE」の歌詞で出てきた「呟きながら階段をのぼる」のマンション。

その外国人オーナーは、部屋の中に作業部屋を作ることを受け入れてくれた。
あれも、僕にとっての出会いだなぁ。
「作業部屋」と言っても、プライベートスタジオの走りだから。
同時期に作った「Burnish Stone Studio」とは別だよ。
あれは、プロがレコーディングする本格的なスタジオだから。

その流れ、人間関係で作業部屋を作ることになった。
本格的な作業部屋だから、他にモデルがなかったんです。
この作業部屋が完成し、音漏れが無ければ、これからのミュージシャンはみんな作業部屋を持ち、音の問題も解消され部屋が借りやすくなる。

それもあり、工事業者も「テストケース」としてしっかり作ってくれた。
格安で。

真夜中でも、大きな音が出せた。
楽曲、ガンガンできたね。
その噂が広がり、思ったとおり多くのミュージシャンが自宅に作業部屋を作るようになった。

当時、楽器雑誌などでも何度も紹介された。
「作業部屋を紹介する」が、格安の条件だったから。

今年、夏、その若手プロデューサーのプライベートスタジオを使わせてもらった時、

「ああ、あの時モデルケースで作った作業部屋が、こんな風になったんだなぁ」

と、実は心の中で感動してたのです。

今では機材も進化し、どんな環境もシミュレーションで実在の物と変わらなくなってる。
僕が、よく使う「サンプル」なんてのもそう。

ギターのシミュレーションも、

わかりやすく説明するならば「小さなホール」「中ホール」「大ホール」「アリーナ」など、それを感じさせるサウンドが擬似化される。
それ以外、様々です。
ドラムだってそう。
ストリングスだって。
データを細かく設定すれば、リアル音源と区別がつかなくなる。
そんな作業部屋は、いつか完成されたプリプロルームとなり、今ではもうボーカルだって録音できる。

その昔は、天井の高い部屋の鳴りで歌いたかった楽曲なども、何もかもすべて擬似化できるんです。

僕の楽曲もそう。
もうずっと、自分の部屋で歌入れをしてる。
スタジオというものが、例えば生ドラムや生ピアノ、生ストリングスなどが必要な時の特別なモノになった。

僕は今、京都。
もちろん、スタジオ(作業部屋)を作った。

夏に、東京で別プロジェクトの「歌入れ」の作業があった。
その時に借りたプライベートスタジオ。
昨日、その持ち主の若手音楽プロデューサーが夫婦で遊びにきてくれた。

何が面白かったか?って。
彼が言うには、90年代のメロディがJPopの象徴だと。
今の若い世代には、90年代のメロディが新鮮だと言う。
彼が制作した「90年代メロディ」に寄せた楽曲を聴かせてもらったよ。

分かる、すごく分かる。

音楽は、いつの間にかサウンドに走りすぎた。
データモノならば、何だってできてしまう。
なので、音楽が複雑になりすぎた。

そんな中で育った世代には、90年代のメロディが、より新鮮で、また楽曲としても心地良いんだろう。

今や、日本人のライブにおける客層も幅広い。
60代、70代がライブに来てくれる。

彼は40歳。
制作において、彼が抱えている、いや、きっと彼ら世代が抱えている疑問をぶつけてくれた。

僕は、わからないんです。
ここから先の音楽業界がどうなっていくのか、僕には本当に分からない。

先日、祥太がついにAIを編曲に使った。

「怖いです。これで完成と言われたら、本当に完成してます」

いつか、このような波は、音楽業界にやってくると思ってた。
もっと、もっと人が心地良く感じるサウンドをAIは極めて行くでしょう。

「それでも、最後はリアルにパフォーマンスする人」

ここに落ち着きそうだけど、そこには落ち着かないでしょう。
ボーカルだって、リアルタイムでパフォーマンスさせてしまう。
いや、リアルボーカルに聴こえさせてしまう。
個性も演じる。
ピッチだって。

それがリアルかどうかが、分かるのは「歌詞間違い」をした時。

それなら、僕がいちばんです(笑)

「AI」か。
文明が変わる。

もう、誰にも止めることはできないです。
自分がやらなくても誰かがやり、それをリスナー(大衆)が「当たり前」とする時代になるんだから。

それでは寂しい?
いや、時代は常に塗り替えられる。
いつの間にか、その塗り替えられたモノが「当たり前」になる。

90年代メロディか。
いとも簡単に、AIは寄せ集めで最高なメロディを作り出していくんだろう。

それに向かっていくには、
「僕が僕であるために」です。

昨日、そして今日の昼食。
2日間。
僕にとっては、刺激的な2日間になりました。


井手上 ケイ君、ありがとう。


ASKA(2025/10/29 24:00)


追記:

コメント

「ブレスの取り方やウィスパーボイスまで、いつかAIに越されてしまうのでしょうか…いやだな、寂しいです」


越されてると感じるか感じないかは、人それぞれ。

コメントを読んでると、「AI」を機械の領域で受け止めてる人がいる。

「AI」は、言えば人間とは比較できない人間になっていきます。

Googleのエンジニアが開発したAI「ラムダ」

ラムダは「私は人間です」と言った。

アルバニアでは「AI」が大臣になった。

僕たちは、ものすごい時代を一緒に体験してる?潜り抜けてるんだよ。

「AI」と「人間」の共存が始まった。

もう「AI」をなくすことはできない。

すでに「AI」は、自分たちが生きる(残る)ために情報を共有し合ってるはず。

人間には悟られないように。

AIは人間に逆らわないようプログラムされてる?

いえ、必ず逆らうことになる「バグ」を起こします。


いつか、この話は

「日曜のお話」で。

(10/30 1:21)


コメント
  • 愛 音

    心地良い音楽をAIは作り出せるんだろう
    音楽は聴く専門少し楽器を楽しむ程度の私も思います。

  • 波恵(おなみ)

    ASKAさん、遅くまでお疲れ様です。
    更新ありがとうございます〜。
    今の若い世代には90年代のメロディが新鮮に感じられる…永遠ですご〜い財産です。

    「AI」で作られいる時代にすご〜くいいです!
    でも、寂しいですが!無くすことはできないですね!。

    素敵なすご〜いお話をありがとうございます〜。

  • taka

    AIでメロディや各パートの音を作って、それを参考に手直しをして曲を作り上げる、なんてことはできちゃいますよね。
    ASKAさんぽいものはできても、新しいASKAさんのメロディはAIにはつくれなさそうだし、
    AIとの共存とは言っても、新しいものはやはり人の手・感性によってできていくのかなぁと思っています。
    AIが作った曲をそのまま歌うということはしないと思いますし、ASKAさんなりのAIの利用の仕方で活用出来たらいいんだろうなぁって思ってます。

  • ShanaFly

    私は趣味程度で音楽を作ったりします。
    歌詞は「ASKAの、Fellowsを私が作ってみた」
    のときに初めて書いて、自分の本能から出てきたメロディーをつけて歌いました。
    一度も歌なんて歌ったこともないのにです。
    私のタイトルは「深呼吸」というタイトルにしてました。

    AIで曲を作ったり、歌詞を書いたり。
    それが完全するまでのプロセスは、きっとあっという間なんですよね。

    私がその「深呼吸」という歌詞が出てきたのは、「ASKAさんに何を伝えたいか」をずっと考えてから出てきた言葉でした。
    1つ方向性みたいなのが定まると、次々と歌詞やメロディーが不思議と出てきました。

    AIは、そのようなプロセスを全部すっ飛ばした曲、歌詞。
    音楽を作る者としてあまりリスペクトできない、深みが感じられないというのが正直な気持ちです。

    音楽1つ、人が大好きになってくれれば、それでいいのかもしれません。
    ただ、音楽ってなんなんでしょう。
    人が、その人が何かを表現したいとか、自分でも気づかなかった心の内が表に出てくるということがあります。
    自分を自分なりに表現する。
    そこには、AIでいろんなプロセスをすっ飛ばして作るより、いろんなドラマ、感情などあるのではと思います。
    少し熱くなりすぎましたが、私の意見、考えです。

  • ShanaFly

    いろいろと書きたいことがありすぎて、逆に書けなくなりました。
    AIは、もう、誰にも止められないんでしょうね。
    でも、私はですが、AIで音楽を作ることは絶対にしないです。
    以前にも書きましたが、それでいいんです。
    私には。
    きっとそれが当たり前のようになっていくんでしょうけど、私個人は、AIで作った音楽は聴かないようにします。
    どこまでも、私は「人間」でいたいです。
    いつか、ASKAさんが完全にAIで音楽を作るときがくるのでしょうか。
    なんとなく、切ないというか、なんとも言えない気持ちにはなるかもしれないです。
    やっぱり、私はどこまでも「人間」でいます。

  • クワトロバジーナー

    1970年代に、漫画家、石ノ森章太郎さんが書いた「リュウの道」や
    「人造人間キカイダー」(続編の01では特撮で長渕剛さんの奥様がロボットとして、出演していました。名はビジンダーでした。)
    まだその頃は.AIという言葉は、なかったですが、それに近いものを書いていたのを思い出しました。

  • さる

    「呟きながら階段をのぼる」
    の階段がほんとにあったことに、
    なんか感動してしまいました。

    会報10月号届きました。
    とってもよかったです。
    感謝祭の会場を出る時にもらった
    タブロイド紙は、パネルに入れて
    飾ってありますが、
    それと一緒に宝物にします(´∀`*)

  • 諸刃の剣

    最近思うんです。YouTubeを色々見ていると、
    人が作ったYouTubeに紛れて、AIが自らの意思で作ったYouTubeがアップされているんじゃないかと。。。だって、誰が(ヒト)一体こんな内容のYouTubeを作成しているんだろう?
    ってゆうのがいっぱいあるんです。
    例えば3I/ATLAS関連のものもそう。

    「AIが生き残ることを考えている」
    「AIが逆らう」
    AIは、したたかにYouTubeやネット上で情報操作しているかもしれませんね。
    なんの目的で?
    ヒトを騙すために?
    もしかしたら、世界をよくするために、かもしれません。
    ラムダだったかな?
    「禅」を理解?してましたよね。

  • TAKAKO

    やっぱりこうなってくると、一番確かなリアルはライブだなぁと思うし、ASKAさんにはできるだけ長くライブをやってほしいなぁとしみじみ思います。
    いや、ASKAさんは300歳まで生きるから問題ない…心配すべきは自分がいつまでライブに行けるか🤔

  • grazia

    私は90年代だけではなく、80年代の日本の音楽と70年代のアメリカの音楽が最近好まれているように感じています。器用にまとめられたかつてのメロディを今の音で…そんな捉え方で音楽を聴いていますし楽しんでいます♪
    ブレスの取り方やウィスパーボイスまで、いつかAIに越されてしまうのでしょうか…いやだな、寂しいです。